7つのポイントで市場調査事例の紹介と解説:海外コンサルがとった開発品評価の方法論とは?

企業にとって、開発段階の製品や商品の最も適切な開発戦略を判断することは難しい決断です。そのような際、市場調査をコンサル会社に発注し、その調査から得られた知見をもとに意思決定をする場合があります。今回は、実際にコンサル会社がとった市場調査の事例を7つのステップにわけて解説を致します。

コンサルがとった市場調査の事例とは?

今回の市場調査の事例を提供してもらう米国本社のコンサルティング会社「エバサナ」は、グローバルから中小規模のバイオテック企業に数多くの調査プロジェクトを全世界で提供しております。特に今回の方法論は、30年以上に渡って製薬業界で活用され、意思決定をするための市場調査の事例に基いた方法論です。データ解析方法そして、フォーキャストとリスク分析の方法論として高い評価をされ、多くの製薬企業でも実際に活用している方法論でもあります。

このような市場調査プロジェクトの依頼を請けました。

市場調査で導きたいクライアントの課題
■ TPP(ターゲットプロダクトプロファイル)がまだ定まらないのに正確に評価したい
■ 不確定要素が多い中で、10年後の市場予測に加え、リスクを組み入れた柔軟な予測は可能か?
■ 開発品への投資価値を最大化したい

製薬会社の開発品は実際に物理的なサンプルはありません。そのため、ターゲットプロダクトプロファイル(TPP)を活用します。今回の依頼に対して、対象国での一次調査を含む市場調査を実施、二次調査で得られたデータを組み合わせて、依頼された開発品の評価を実施しました。

今回の市場調査では、実際に以下のような3つのメリットをクライアントが得ることが出来ました。

本プロジェクトでクライアントが得た3つのメリット
■ 開発品価値の最大化することが出来ました。そして、クライアントが想定した以上の潜在的な価値が明らかになりました。
■ 十分な質と量の市場調査を通じ、想定したTPPでの開発品を評価することが出来ました。
不確定要素を踏まえた10年後の市場予測に加え、ありうるリスクのインパクトが明らかになりました。

それでは、クライアントが必要とした得たメリットをいかにして導き出したのか、エバサナがとった市場調査の方法論の解説を致します。なお、今回ご紹介する事例は、英語ではありますがスライドとして無料で希望の方に提供しています。ご希望の方は、【ダウンロード】製薬会社むけコンサルがとった開発戦略の価値を最大化するための調査・方法論とは?でからリクエストが可能ですのでご活用ください。同社がとった市場調査を通じた開発品評価の事例と方法論を詳細に学ぶことができます。

市場調査依頼の背景

グローバル市場で開発品の導出を検討中

今回依頼の製薬会社は、自社での創薬に力を入れている中堅の製薬会社です。比較的新しい段階にある新規化合物で、国内では自社販売を目指し、海外では導出する戦略をとっています。自国以外での営業拠点を持たないクライアントとしては、どのような条件でライセンス契約を結ぶかは常に重要な開発戦略です。

クライアントは、導出の最も有利な導出のタイミングを調査依頼の開発品でも検討をしています。社内では今すぐ導出するべきという意見とリスクをとって自社でしばらく開発を継続するべきとの声もあり、判断が分かれています。

競合がひしめく疾患領域での10年後の市場は?開発品の市場での評価は?

今回対象としている調査地域は、欧州5か国と米国です。自己免疫疾患を対象としてファーストインクラスのユニークな作用機序をもちます。効果の高い治療薬がひしめく競争が激しい疾患市場である一方で未だに解決されていない高い医療ニーズもあります。

対象市場が10年後どのような市場であるかの予測は不確定要素が多く、難しい中で、導出の交渉には、同開発品の評価と売上予想情報が必須です。今後交渉をするパートナー候補に対しても市場調査に基いた説得力のある評価分析情報を必要としています

コンサルが提案した市場調査の方法論:7つのポイントを解説

1. シナリオ分析

10年後の疾患領域の市場を想定するにあたり、適切なシナリオ分析が必要です。一方で、それらのシナリオは、現時点で予測することは非常に難しいため、シナリオを策定するに当たり需要な要素は何かを選択肢、その要素に沿ってマトリックスでシナリオを分析します。

それらの要素の変動によってどのようなシナリオが想定されるか、クライアントの製品の市場でのポジションを探ります。

コスト、剤形、競合数などを念頭に置き、それらの要素が10年後の市場の動向にどのような影響を与えるのかを見いだします。これらのシナリオは、市場の予測の際の変動要素として活用されます。

2. TPP作成

製薬会社の市場調査の対象の開発品は消費財のように調査対象としての「モノ」は実際に手にとって見ることができないので想定される医薬品のプロファイル「TPP(ターゲットプロダクトプロファイル」を活用するのが一般的な方法です。

今回の市場調査分析では、様々な不確定要素に対応できる柔軟な市場予測をするにあたり、調査対象のサンプルとしてのTPPを3種類作ります。

■ Base TPP:現時点で想定できるベーシックなTPP
■ Low TPP:現時点で想定される最低でも達成可能なTPP
■ High TPP: 現時点で想定できる最良のTPP

予測や分析はこの想定される3つのTPPの情報の中でされます。TPP策定の際の大切なポイントとして、クライアントの合意を得ることと、調査対象サンプルとして明確な表現やデータを活用していることです。

3. 市場調査実施

製薬会社にとって開発品の市場調査をする際の対象は多くの場合、医師、KOL(キーオピニオンリーダー)です。これらの対象に対して調査をする場合、求める調査内容によって2つの調査手法があります。

定性調査と定量調査によって以下のような内容を引き出します。

市場調査の方法論の骨子
■ 現状の対象自己免疫性疾患での治療実態とアンメットニーズ
■ 治療対象となる患者セグメントの分類
治療方針を決定するうえで最も重要と考えるファクターを導き出す
■ 今後10年間の治療の変化への意見、トレンド
■ クライアントの治療薬の競争力、弱み、機会
■ 投与対象となると思われる患者グループの同定
■ 想定されうる価格設定

4. 感度分析でリスクを可視化

 

不確定要素が多い疾患市場の予測は非常に困難ですが、柔軟にそれぞれの不確定要素に対応することが大切です。不確定な要素の中でも、リスクを把握し、それらのリスクが市場や調査対象の開発品にどのようなインパクトを及ぼすのかは、調査で得られた情報を感度分析の手法で解析をします。

リスクのインパクトが多い場合、そのリスクへの対応によって売上予測にも大きな振れが生じます。感度分析では、これらの要素を影響が高い順にリスト化し可視化しますが、このチャートが竜巻のように見えるので「トルネードチャート」とも言われます。

なお、感度分析は必ずしもリスクのみでを抽出するのではなく、市場の外部要因などの不確定要素を変動要素として抜き出します。

機会損失とリスクを回避するメソッドと言えます。

5. 売上予測

3つTPP、それぞれで売上予測

この段階で、10年間の売上予測をするための情報は調査を通じて収集されています。

まずはリスクなどの変動要素を除いたシンプルな売上予測をします。この予測では、ベースのシナリオ、プロファイルでのピーク時の売上がいくらで、どのタイミングなのか、通常の市場予測で導かれるデータが得られます。

不確実性を考慮した売上の「帯」

開発戦略をするにあたって製薬会社では、様々な不確定な要素に対応する必要がありますので、シンプルな売上予測だけでは、起こりうるリスクや市場の外部要因の変動などに十分対応できません。例えば、競合品が「開発を中止」した場合は自社品にとってはポジティブに、競合品が「より高い臨床結果を発表」した場合はネガティブなインパクトとして予測に大きく影響を与えます。

不確定要素に対して売上予測をする場合、それらのすべての不確定要素が起こりうる範囲で予測をする必要があります。そのために、確率分布分析を使います。この分析では調査で得た仮説に基いた売上ポイントをすべて算出します。この手法はモンテカルロシミュレーションと言いますが、結果として、売上予測ポイントは各TPPごとに、点の集合体、つまり帯のような形で予測値は表されます。

この帯で平均値は、最もポイント数が大きい売上として仮説の基準値として活用されますが、不確実的要素のコンビネーションによって、平均値より高い売上、低い売上の場合があります。

これらの帯には無数のデータポイントがあり、ばらつきがありますが、予測の仮定条件で、この帯の外の売上予測は確率的にありえないことも言えます。また、端にいけばいくほど確率的に少なくなりますが、どの範囲の確率にその予測値があるかはパーセンタイルという表現を使います。

例えば、10%タイルというと帯の最小値から10%の位置にあることを示します。通常、10%タイルや90%タイルになると分布としてのポイントも少なく、可能性としては低いものの、リスクや条件によってありえる予測値とも言えますし、製薬会社は、基準値のみならず、これらのポイントもあり得る予測として考慮する必要があります。

6. 各フェーズでのNPVで価値を算出

 

製薬会社が医薬品を開発するためには研究開発費が必要です。開発段階では、臨床試験のコストが膨大です。そのため、開発品の価値を算出するには、その投資額を差し引くことで現在の価値であるNPVを導き出します。NPVは、開発品のプロジェクトとしての評価指標とも言えます。

通常NPVは、時間価値も考慮に入れますので、開発品が初期になればなるほどNPVの価値は下がります。これは、上市のタイミングが来年と10年後であれば、来年販売できる製品の価値が単純に高いことになります。今回の事例では、開発初期段階の化合物でしたが、第1相、第2相、第3相が成功した場合、失敗した場合でのNPVを算出することで、クライアントの意思決定をサポートしています。

医薬品業界の開発品の予測には不確定要素としてのリスクとともに、臨床試験の成功確率などを考慮する必要があります。臨床試験の成功と失敗により医薬品の価値もリターンも大きく変動をします。

7. 提案:コンサルがクライアントにした最終提案

finalanswer

本プロジェクトの最後には、提案を含む最終プレゼンとエクセルのモデルが提供されています。

モデルは、統計の専門家とシステムの専門家がモデル作成に携わります。プロジェクト終了後もクライアントがパラメーターの変更を加えることが出来るユーザーフレンドリーなモデルを提供、今回のプロジェクトにおいても、モデルは、最終報告文書の一つとして提供しております。

今回の調査によって、クライアントの開発品が対象としている自己免疫性疾患における現状と今後の課題と市場動向が明らかになりました。想定した3つのTPPそれぞれにおいて、どのようなリスクが想定され、そのリスクの程度を明らかに示します。調査によって、この新規化合物の今後の開発の進め方によって、クライアントが想定した以上の価値が潜在的にあることも明らかになりました。

いくつからあるリスクにおいては、バイオシミラーを含め、価格戦略がリスクファクターとしても非常に高いことも認識されました。競合品が自社品よりも上市となることも、大きなリスクであり、開発のスピードが、この化合物の価値を高めるには重要なファクターであることが認識されました。一方で、上市のタイミングが競合品より早まることで、どの程度の機会となるのかも、具体的な数値で示されています。

これらの調査内容から、開発品の価値をより高めるためには、すぐに導入検討するではなく、臨床計画に比較試験を組み入れるなど若干の変更を加え、リスクを取るものの、自社での開発を進めた上で導出をすることで、開発品の価値を最大化できることを提案しました。

これに対し、クライアントは、自社で治験をすすめ、これらの治験結果を加えることで、更に化合物の価値を高める開発プランを選択することを決めました。

また、導出か、開発継続かの社内での議論に関しても、調査結果と分析内容をもとに、社内コンセンサスを取ることが出来ました。

市場調査の事例、いかがでしたか?

今回は、開発初期段階にある化合物の価値の評価と、その情報をいかに開発戦略に活用できたのか、エバサナの実際に提供したプロジェクトをケーススタディとしてお知らせいたしました。

初期の化合物はNPVでの価値の評価では、承認、上市のタイミングがずいぶんと先になるのでどうしても低く評価されがちですが、適切なタイミングでライセンス契約を行うことは、自社の開発品の価値を最大化することでもあります。導出ありきでの開発にとどまらず、スクと売上予測をすることで、より強固なデータをもとに開発戦略の方向性を定めるためのプロジェクトを紹介いたしました。なお、Insights4ビジネスでは、市場調査に関するご相談、ご依頼も受け付けております。どうぞご相談下さい。

 市場調査のご相談、ご依頼はこちらから>>>

あわせて読みたい

今回ご紹介した市場調査の方法論の事例は、エバサナ社の協力を得ております。同社は、米国本社のライフサイエンス業界にグローバルなサービスを提供するリーディングカンパニーで日本でも多くのプロジェクトをすでに実施しております。


市場調査の発注を検討されている方へ


関連記事

  1. mRNAワクチン承認で激変したワクチン市場。おすすめの市場調査会社とは?

  2. RFP

    RFP(提案依頼書)とは?RFPを使うメリットと課題をわかりやすく解説

  3. RFP

    失敗しないRFPの書き方3つのポイント。提案依頼書には何を書いて、どう使うべきなのか?

  4. RFPをつかう意味とは?RFPの意味を理解することで成功に近づける3つのミーティングとは?

  5. marketresearch

    市場調査、発注までの完全ガイド。はじめてでも失敗しない5つのポイント解説