製薬会社が自分たちで市場調査を行う際の調査方法と注意点とは?

市場調査によって、顧客のニーズや要望、製品やサービスの改善点、競合他社の動向、規制や法律などの様々な情報を収集することができます。これらの情報は、製品やサービスの開発や販売戦略の策定、市場動向の正確な把握、競合他社との差別化、リスクマネジメントなどに役立ちます。このことからも「市場調査によって得られる情報」は、多くの企業にとって今や欠かせないものとなっています。

製薬業界においても同様です。新薬の開発や新市場参入、新たなパートナー会社との提携には、時間と多額の投資、そして正しい意思決定が必要です。市場調査から得られる情報は、製薬企業の戦略の判断や実行に活用されています。

このような市場調査ですが、時間とコストに制限がある中で自分で市場調査をしたいのですが、どうすればよいのでしょうか?という質問を頂きます。

自分で市場調査をする場合には、メリットやデメリット、そして適切な準備と調査方法があります。この記事では、製薬会社が自分で市場調査をする場合のポイントを説明したいと思います。

※ 自分で市場調査を実施する場合
どのような調査方法があるのか?
どのような点に注意が必要なのか?
自分で調査するべきか、調査会社に依頼をするべきかの判断のポイント

私は20年以上にわたり、外資系市場調査会社で製薬会社の多くのプロジェクトに携わってきました。この記事では、製薬会社が、自分で市場調査をするときの注意点やうまくいくためのヒントを私の経験を踏まえて解説したいと思います。

製薬会社が自分で市場調査を行う場合のメリット3つ

※ 自分で市場調査を行うことのメリットとして、以下のような点が挙げられます。
■ コストを抑える
■ 時間の節約
■ 情報管理

コストを抑えることができる

自分で市場調査を行う場合は、調査費用を大幅に削減することができます。

市場調査会社に調査を依頼する場合、高い調査費用がかかってしまいます。海外の調査、より戦略的な場合や大規模ば場合では、数百万円から数千万円になることも珍しくありません。

自分で市場調査を行う場合、調査方法や調査範囲、調査期間などを自由に設定できるため、自分の調査目的に合わせて規模や期間も柔軟に対応することができます。また、最近は、インターネットやSNS、ウエブ会議などのツールを活用することで、今までにないくらい手軽に全世界で市場調査を行うことも可能です。

必要な調査データや情報を収集するための人員や設備、システムなどの投資が必要になりますが、市場調査会社に依頼する場合に比べると、総合的なコストは抑えられる傾向にあります。

時間の節約

市場調査会社に依頼する場合、調査の依頼、価格の交渉、進捗状況の確認などのやりとりに時間がかかることがあります。しかし、自分で市場調査を行う場合、自分で調査の計画や方法を決定し、調査結果を素早く取得することができます。

特に、データ収集方法や分析手法を熟知している場合や、同様の市場調査を過去に経験している場合は、比較的簡単に市場調査を行うことができます。

これにより、時間を節約し、より迅速かつ効率的に市場調査を実施することができ、時間を大幅に削減できます。迅速な判断のために調査が必要な場合は、自分で市場調査をすることで、迅速に戦略判断をすることが可能となります。

なお、時間がないから無理に経験やツールもない状態で「やっつけ」で市場調査は絶対におすすめしませんので、注意をしてください。

自社の情報管理

市場調査を実施する場合、自社の研究の内容などを含めた非常に機密性の高い情報を取り扱います。専門家へのインタビューなどをする場合でもこの情報の扱いは非常にデリケートです。また、直接株価に影響を及ぼすような社外秘の重要事項が含まれます。そのため、CDA(機密保持契約)の締結や調査会社への正確な情報提供が大切です。

この点、自社で市場調査を行う場合、これらの情報管理をしっかりとコントロールすることができます。そのため、企業の情報管理という点で、自分で市場調査を行うことは情報の管理はしっかりと行うことが出来ます。

自分で市場調査をする際の調査の種類、方法とは?

アンケートやインタビューだけではない市場調査の種類

市場調査とは、実際に調査を実施する一次調査(プライマリリサーチ)と、すでに調査されたり、まとめられたりしている情報を調べる二次調査(セカンダリーリサーチ)の2つの種類があります。

一次調査では、調査対象に直接アンケート調査やインタビュー調査を行うことを言います。市場調査というとこの一次調査のことを指しているとの印象がありますが、二次調査と呼ばれる調査も含まれてきます。

二次調査では、すでに公開されている資料や情報を収集し、その情報を基に調査を進める方法です。会社が発表しているリリースやニュース、市場調査レポート、政府機関が発行している公的な情報の収集が二次調査と言われます。

一次調査は、方法によって得られる情報が異なる

市場調査の方法を大きく分けると定量調査(Quantitative Research)と定性調査(Qualitative Research)の2つに分けられます。大切なことは、このどちらかの調査方法を選択することによって得られる情報が異なるということです。実際に、自分で市場調査をする場合、目的に併せて適切な一次調査の方法を選ぶことが非常に大切になります。

1つ目の「定量調査」では、「トレンド」や「傾向」をつかむことができます。数値データを市場調査を通じて収集、そのデータを基に客観的な分析を行う市場調査方法です。

例えば、アンケート調査や訪問調査、ウェブアンケートなどを使い、一定数の回答を収集して分析することが一般的です。定量調査では、統計学的手法を用いて、データの集計や分析を行い、具体的な数値データとして結果を表現します。

※ 定量調査には以下のような調査方法があります
• オンライン調査
• アンケート調査

次に、「定性調査」と呼ばれる調査方法では、KOLなどの専門家の「意見」や「知見」を得ることができる調査方法です。この内容には、調査対象者の主観的な意見や感情、行動、価値観など様々な情報が含まれます。

※ 定性調査には以下のようなものがあります。
• インタビュー調査
• グループインタビュー調査
• フォーカスグループ/座談会

定性調査では、質問状は準備するものの、質問項目や回答選択肢があらかじめ決まっておらず、オープンエンドの質問を用いたり、自由記述式のアンケートを用いたりすることが一般的です。インタビュー調査を通じて、傾向やトレンドではなく、インタビューした対象の人の洞察や意見を聞くことを目的とした調査です。

自分で市場調査をする際の注意点とは?

自分で調査をする場合、二次調査の徹底を心がける

市場調査というと、インタビューやアンケートなどの一次調査に注目が集まりがちですが、自分で市場調査を行う場合には、二次調査を徹底的にすることが大切です。実際、自分で市場調査をする場合、この二次調査がうすくなります。面倒で手間がかかる作業ですがとても重要です。

市場調査会社やコンサル会社は、レポートやデータベースを自社ですでに多くの情報を保有していますが、担当者は、依頼事項に関してかなり徹底した二次調査を加えて情報武装をしてプロジェクトにあたります。自分で市場調査をする際も、二次調査でどのくらい情報を得られているかどうかは、結果に大きな影響を与えます。

製薬企業やバイオテック企業が二次調査のソースとしては、各国の規制当局や政府機関が発行しているレポート、統計情報およびウエブサイト、製薬企業をはじめとした企業のウェブサイト、業界専門誌、市場調査レポートおよび市場調査会社の商業用データベース、学術論文、ニュース記事などが挙げられます。これらの情報源から得られるデータは、二次情報として活用されます。

一次調査の正しい方法を選択する

自分で市場調査をする場合には、一次調査で得られた情報をもって、今後の判断の材料としますので、一次調査で得られた情報はもちろん重要です。ただ、自分で市場調査をする場合にこの調査方法を間違って選択してしまっては、必要としている結果を得られることができなくなってしまうので正しい調査方法を選択しなければなりません。自分で調査をする際の注意点をいくつかあげたいと思いますので、調査方法を決定する際の参考にしてもらいたいです。

定量調査を自分だけでするのはおすすめしません

自分で市場調査をする場合、私は、自分だけで定量調査を実施することはおすすめしません。実際、定量調査自体は、比較的簡単にオンライン上で実施することができます。簡単にできるからと行って自分で定量調査をしようと思っている場合は、注意が必要です。その理由を3つ紹介します。

バイアスの問題

バイアスとは、データの収集や分析に偏りがあることを指します。例えば、アンケート調査であれば、回答者の性別や年齢、居住地などによって回答結果が変わる可能性があります。このような偏りがある場合、正確な市場調査結果を得ることができません。

サンプル数は十分か?

市場調査を行う際には、必要なサンプルサイズがある程度以上必要となります。十分なN数がない場合、偶然の要因で誤った結果が出る可能性があります。そのため、サンプルサイズを十分に確保することが重要です。

属人的な手間、経験や技能が必要

定量調査ですが、実は経験や技能、そして手間をかける必要があります。例えば、アンケート調査を行う場合、問題文の選択肢の表現や順序、回答の取り扱いなどをしっかりと作成する必要があります。また、結果が変わってしまうことがあります。アンケートとなる対象となる人は自社では持っていないコンタクトであることが多く、その場合はアンケートの対象は探し出してくるという手間も加わります。

「傾向」をつかむだけで良いのか?

定量調査では、トレンドや市場の傾向をつかむのに非常に適した調査方法です。しかしながら、調査項目や回答が「Yes」「No」、または規定の選択肢から選ぶ、5段階評価など限定的になりがちです。そのため、傾向はうまくつかむことはできますが、その背後にある理由や問題などを把握することはできません。

定量調査を自分で実施する場合は上記のような課題があるため、アンケート調査やネットサーベイで簡単に取れそうな気はするのですが、注意が必要です。それでは、定量的な調査を自分でする場合どのようにしてこの課題を克服すればよいのでしょうか?

課題解決方法:アンケート(定量調査)をアウトソースする

自分で市場調査を行う場合、定量調査はおすすめできないと申しましたが、その代わり、アンケートやサーベイの調査を外部に委託してしまうことでこの問題を解決できます。

市場調査の実施のみを受託する会社もありますし、専門の調査会社は膨大なサンプル数をすでに持っています。また、インターネット調査専門の調査会社への外注は、比較的コストが抑えられる傾向があります。

調査規模、調査内容や実績により、料金体系やサービス内容などに違いがあるため、複数の調査会社で比較することが重要ですが、定量調査のみを外注する場合は、費用はかなり安く抑えて委託することが可能です。

外注して得られたデータの分析に注力する

市場調査を自分で行う場合でも、定量調査に関しては、コストを抑えつつ外注することで、時間を作ることができ、外注先から届いたデータの分析に注力することをおすすめします。外注して得られた定量調査データの分析を自分で行うメリットもいくつかあります。

自分がもつ専門知識のバックグラウンドで分析することが出来ます。今回のような委託は、分析や解析は依頼しません。そのため、分析は自分でしますが、専門的な知識や自社で抱える情報をもとに分析したほうがより効果的な分析結果を得ることが可能です。

また、定量調査部分を外注することで作り出した時間を、よりクオリティの高い業務の時間に費すことができます。定量調査を自分で実施する場合には、調査の準備と実施に多くの時間がかかりますが、外注することで、これらの時間と費用を削減できます。

自分で市場調査をする場合は「知見」を得る定性調査に注力

自分で市場調査をする場合、そのような「市場のトレンド」がなぜ起こっているのか「専門家の意見や知見」の情報を得るほうが、意思決定や今後の社内のディスカッションに有意義と考えます。このような情報を得るには定性調査が有効です。

例えば、製薬会社が、医師が処方薬を変える「きっかけ」「タイミング」「その理由」を調べたいという要望があります。

もし、調査会社に依頼した場合には、この情報を得るために、調査会社は定量的な調査と定性調査のコンビネーションで高度な分析をすることが出来ます。「コンジョイント分析」「モンテカルロ分析」などの方法論がありますが、当然、調査規模は大きくなるので費用も非常に高くなります。これらの手法を使うには、膨大なデータと解析スキル、そしてプログラミング知識が必要な場合もあります。

そのため、自分で市場調査をする場合、これらの調査方法はおすすめしません。そのかわり、定性調査に集中することで、自分たちが「使える」情報を得ることができます。

今回の例での場合、医師の「処方薬を変更する」理由に加えて、「処方薬を変更しない」理由を徹底的にインタビューすることで、処方薬を変更する、または変更しない場合のコンディション、タイミング、条件と同時に、その理由まで「知見や意見」を得ることができます。この場合、大規模な調査数は必要なく、KOLレベルの先生に「数人程度」の定性調査をかけることで情報が得られます。

以上のように、自分で市場調査を行う場合には、定量調査をするばあいには、注意が必要です。市場調査の目的や調査対象に応じて、適切な調査方法を選択し、偏りのない調査結果を得るように心がけましょう。

製薬会社が自分で市場調査をする際のメリットと注意点のまとめ

戦略的な意思決定に市場調査を活用している製薬会社ですが、自分たちでも市場調査をするにはどのようにすればよいのか?という声を聞きます。

自分で市場調査を行うことで、コストと時間を節約し、情報をしっかりと管理した中で調査分析を行うことが出来ますが、目的に応じて適切な調査方法を選択することが重要です。

市場調査では、一次調査に注目しがちですが、自分で市場調査をする際には、実は徹底的に行う情報収集の2次調査も非常に重要です。

一次調査では、定性調査と定量調査がありますが、自分で市場調査を行う場合には、どちらの調査方法が適切なのかを判断する必要があります。

定量調査は、数値化したデータを収集する方法ですが、ネット調査など簡単にできそうですが、自分で調査をする場合には、課題が大きく、定量調査のみを外部委託するも成功するための方法です。このことで、分析に集中することができます。

製薬会社が自分で市場調査をする際には、専門家の意見や知見を得ることができる定性調査を活用することで今後の会社の意思決定に必要な深い洞察を得ることができます。

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