世界のオンコロジー最新ニュースのまとめ[2024年2月10日]|Insights4 Oncology

武田薬品の抗癌剤開発幾つかが脱落

2月3日

武田薬品が注力してきた抗癌剤開発の一部が、去年10月から12月に失敗しました。インターフェロンα2bと抗CD38抗体の合体品であるmodakafusp alfa(TAK-573)による多発性骨髄腫のPh2試験や、固形癌向けのPh1試験が中止されました。また、患者毎にカスタマイズされるCAR-T療法の3つのPh1試験も失敗し、固形癌向けのGPC3標的CAR-T・TAK-102やメソセリン標的CAR-T・TAK-103、そして血液癌向けのCD19標的CAR-T・TAK-940が脱落しました。

オリジナルリンク: FierceBiotech

NovartisのTim-3阻害剤sabatolimabが脱落、BTK阻害剤remibrutinibは頓挫

2月1日

Novartisが開発中の免疫チェックポイント阻害剤、Tim-3阻害剤sabatolimabとBTK阻害剤remibrutinibの動向。sabatolimabは骨髄異形成症候群(MDS)の試験で効果不足により開発中止となり、remibrutinibもシェーグレン症候群への開発が中止されたが、他の疾患への開発は継続中。

オリジナルリンク: Novartis

米Merckの抗PD-1/L1薬Keytrudaが去年の売り上げで250億ドルを達成

2月2日

Merck & Coの抗PD-1薬Keytruda(キイトルーダ;pembrolizumab)が、2023年の売り上げが19%増の250億ドルに達し、米国でのバイオシミラーとの競争によりAbbVieの抗TNF-α抗体Humiraの売り上げが減少。去年最も売れた薬はKeytrudaとなりました。

オリジナルリンク: BUSINESS WIRE

血液腫瘍

アステラス製薬の癌患者リンパ節染色剤pudexacianinium chlorideのPh2試験中止

2月6日

癌に最も近いリンパ節を手術中に特定し、摘出を支援するリンパ節染色剤pudexacianinium chloride(ASP5354)のPh2試験がアステラス製薬により戦略的理由で中止されました。癌に最も近いリンパ節の摘出は、癌がそのリンパ節に到達していないかどうかを確認するための生検に用いられる手法であり、センチネルリンパ節生検として知られています。一方で、尿管を可視化する可能性を検討中のpudexacianinium chlorideのPh3試験は継続されています。

オリジナルリンク: Supplementary Documents [IFRS] Financial results for the first nine months of the fiscal year 2023 (FY2023 / Astellas Pharma

Gileadの抗CD47抗体magrolimabの血液癌開発中止~固形癌試験の安全性調査中

2月8日

Gilead Sciences社は、死亡例の増加を受けて血液癌治療向けの抗CD47抗体magrolimab(マグロリマブ)の開発を中止しました。骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を対象とした同剤のPh3試験ENHANCE-3や他の試験の解析結果に基づき、同剤治療の効果が不十分であり、死亡例が増加していることが判明しました。一方、固形癌治療向けの試験の安全性情報は調査中であり、その結果についてGilead社は速やかに公表する予定です。

オリジナルリンク: Gilead Statement on Discontinuation of Phase 3 ENHANCE-3 Study in AML

GSKのBlenrep込み治療で骨髓腫患者の無増悪生存が改善したPh3試験詳細報告

2月7日

GSKの殺細胞剤(auristatin F)付き抗BCMA抗体Blenrep(belantamab mafodotin)を含む治療で、再発/治療抵抗性(r/r)多発性骨髄腫患者の病勢悪化や死亡が59%減少したことが、Ph3試験DREAMM-7の詳細報告で示されました。Blenrepとボルテゾミブ、デキサメタゾン(BorDex)の併用では、無増悪生存(PFS)中央値が約3年(36.6か月)であり、抗CD38抗体Darzalex(daratumumab)+BorDexの13.4か月を3倍近く上回りました。Blenrepは2020年に米国で承認されましたが、単独での使用ではPFS改善が見られず、FDAの要請により米国市場から撤退しました。欧州では承認が維持されていますが、実質的な意思決定の場CHMPが取り消しを決定しています。GSKの癌分野R&Dの長Hesham Abdullah氏はBlenrepの今後の承認申請方針についてコメントを控えています。

オリジナルリンク: GSK details Blenrep combo data that could bring the multiple myeloma ADC back to life

消化器がん

非ピロリ菌による胃癌誘発の仕組みを発見

2月6日

胃癌とピロリ菌の関連が知られていますが、酸性環境に耐えるグラム陽性細菌であるストレプトコッカス アンギノーサス(S. anginosus)による胃癌誘発のメカニズムが明らかになりました。S. anginosusの表面蛋白質TMPCが胃上皮細胞のANXA2受容体と相互作用し、この結合によってS. anginosusが胃に定着し、MAPK経路が活性化されて胃癌を誘発することが示されました。

オリジナルリンク: Streptococcus anginosus promotes gastric inflammation, atrophy, and tumorigenesis in mice. Cell. January 30, 2024

若くしての大腸癌発現と関連するらしい細菌が見つかった

2月9日

若年性大腸癌(young-onset CRC、yoCRC)発症と関連する可能性がある細菌が発見されました。50歳未満のyoCRC患者にはアッケルマンシア(アッカーマンシア、Akkermansia)やバクテロイデス細菌がよく見られました。アッケルマンシアが豊富なyoCRC患者は生存期間が長く、一方でフソバクテリウム細菌が豊富な患者は短命である傾向が見られました。過去の研究では、マウスにおけるアッケルマンシアの投与が大腸癌の予防効果を示しています。

オリジナルリンク: What’s behind the rise of colorectal cancer in younger adults? Bacteria may have the answer / FierceBiotech

泌尿器がん

LillyのCDK 4/6阻害剤Verzenioの前立腺癌Ph3試験失敗

2月7日

Eli LillyのCDK 4/6阻害剤Verzenio(ベージニオ;abemaciclib)は前立腺癌相手のPh3試験CYCLONE-2で目標を達成できず、失敗しました。転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者への同剤とJ&Jの前立腺癌薬Zytiga(ザイティガ;Abiraterone)とプレドニゾン(またはプレドニゾロン)併用の無増悪生存(PFS)改善が見られませんでした。VerzenioはmCRPC癌に苦戦し、先立つPh2試験CYCLONE 1でも目標達成を逃しています。売り上げは好調で、去年だけで39億ドル近くを記録しましたが、前立腺癌治療においては挫折が続いています。

オリジナルリンク: Lilly Reports Strong Fourth-Quarter 2023 Financial Results and Provides 2024 Guidance / PRNewswire

婦人科がん

乳がん検診後の異型診断後、浸潤性乳癌の発生は僅か

2月5日

英国イングランドの記録によると、乳がん検診で異型が見つかった女性の1年、3年、6年後の浸潤性乳癌の発生率はそれぞれ約1人、14人、45人であり、特に3年後の発生率は極めて低かった。異型の手術的除去の必要性は示されず、吸引除去が手術と同等の安全性を持つことが示唆されています。

オリジナルリンク: Atypia detected during breast screening and subsequent development of cancer: observational analysis of the Sloane atypia prospective cohort in England. BMJ. 01 February 2024

12-13歳にHPVワクチン接種した女性に誰一人として子宮頸がん発生は見当たらず

2月7日

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを12歳か13歳のときに接種した女性の中で、浸潤子宮頸癌の発生が一人も見られなかったという報告があります。この結果は英国スコットランドの1988年から1996年に生まれた女性の記録を調査した結果です。

オリジナルリンク: Invasive cervical cancer incidence following bivalent human papillomavirus vaccination: a population-based observational study of age at immunization, dose, and deprivation. JNCI. 22 January 2024

商談

支払い不履行によりAllarity社が抗癌剤dovitinibの権利喪失

2月3日

Allarity Therapeutics社がNovartisへの約束した達成報奨金を支払えず、抗癌剤dovitinib(ドビチニブ)の権利を失いました。代わりに同社はPARP/タンキラーゼ阻害剤stenoparibに焦点を移し、卵巣癌のPh2試験を進行中です。

オリジナルリンク: Allarity loses dovitinib rights after Novartis terminates license / FirstWord

Gilead社がTizonaを買収せず

2月8日

Gilead Sciences社は、免疫チェックポイントHLA-G標的抗体TTX-080を開発するTizona Therapeutics社の買収権利を行使しませんでした。2020年にGileadはTizona社の株式49.9%を取得し、将来的な買収のオプションを持っていましたが、その権利は行使されずに終わりました。しかし、GileadはTizona社への投資を継続し、TTX-080のPh2試験の進行を支援する予定です。

オリジナルリンク: Gilead won’t acquire checkpoint oncology biotech Tizona / Endpoints

NovartisがPh3試験中の骨髄線維症薬pelabresibを擁するMorphoSysを買収

2月6日

NovartisがMorphoSys社を27億ユーロ(29億ドル)で買収し、Ph3試験段階の骨髄線維症(MF)薬pelabresibや固形癌/リンパ腫患者向けのPh1/2試験段階のEZH1/2阻害剤tulmimetostatを手に入れます。同日、MorphoSysが売るリンパ腫薬Monjuviは昔なじみのIncyte社に譲渡され、NovartisではなくIncyte社が独占権を取得します。Monjuviの今年の米国売り上げは8000~9500万ドルと見込まれています。

オリジナルリンク: MorphoSys Enters into Business Combination Agreement to be Acquired by Novartis for Euro 2.7 Billion Equity Value / ACCESSWIRE

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Insights4オンコロジー編集責任者 SDMJコンサルティング 代表 前田静吾

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